残暑厳しい八月の終わり 染め屋さんのご協力で 親子染色教室をひらきました。 今日は友禅染めの巾着を染める予定です、 夏休みの宿題に頑張ろう!
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まずは工程の流れと説明を聞きます。 「糸目糊置き」や「友禅挿し」「蒸し」など 普段聞き慣れない言葉が 沢山出てきますが みんな真剣に聞いています。
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まずは、紙に書いた下絵の上に生地を貼り 写った下絵を青花でなぞります。 青花で描いた線は、後に「蒸し」の工程で 蒸気を当てると消えてしまいます。 みんな慣れない筆に 最初は苦戦していたようですが 筆に青花を浸けすぎず よく絞りながら描いて、なんてコツをつかむと だんだん上手になってきました。
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渋紙を丸めて先に口金を浸けた筒に 糊を入れて絞るようにして 先ほど描いた青花の下書きの上に 線を置いてゆきます。 (ケーキの生クリームを絞るイメージですが 片手で鉛筆を持つようにして置いてゆきます)
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置いた糊は生地の上に盛り上がってのります。友禅を挿すときには、 染料がにじんで広がらないように、この糊が堤防の役目をします。 塗り絵のように、線が途切れるところが無く、絵の線がすべて閉じるようにして糊を置きます。
糊は本来は白いのですが、白い生地に乗せると見えなくなってしまいますので 群青の粉を混ぜて青くしてあります。この青い色も跡で水で洗うと残らずに落ちてしまいます。
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生地を枠に張って 今日はお天気が良いので 表に出して乾かします。 細い繊細な線があったり 太い力強い糸目があったりと それぞれに染め上がった時の 「味」になって出てくるのです。
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次は友禅を指す前の 地入れという工程です。 大豆を搾った「豆汁(ごじる)」に 布海苔(右の写真です)をにて混ぜ 刷毛で生地に塗ってゆきます。
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地入れは、友禅を滲みにくくしたり、 色を定着させたり、発色をよくしたり、 といった作用があります。 自然の材料ですので 夏場は特に腐りやすい為 アンモニアが混ぜてあり 鼻を近づけるとツンときつい臭いに みんなびっくりしていました。
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刷毛で生地全体に よく塗ってやります。 ここは本職の職人さんに おまかせです。
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また表で乾かします、 みんなだいぶ慣れてきて 人の作品を見る余裕も出てきました。
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生地が乾くまでの間、 絵のどこにどんな色の友禅を挿すか 考えておきます。 染料はあらかじめ何色も作って 番号がふってありますので 下絵に控えを書いておきました。
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いよいよ生地に友禅で色を挿してゆきます。 最初はおそるおそる薄い色から・・・ 多少はみ出しても味のうち、 なんてふうに慣れてきたら ちょっとボカシを入れて・・ といったことも 出来るようになってきました。 やっぱりみんなこの工程が 一番楽しそうでした。
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子供たちより、見ているママたちの方が
真剣だったり・・
今度はご自分でもしてみたい
と思った方も多いようでした。
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染め上がりです、 まだ染料で生地が濡れた状態ですので だいぶ濃く見えます。 塗り立てはちょっと沈んだ色合いですが だんだんに乾いて、後で高温の蒸気を当てる 「蒸し」の工程を経ると 発色が綺麗になってきます。 生地に塗り立ての色ではなく その発色した色の染め上がりを思いながら 染めるところが友禅の難しいところです。
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染め上がった時には、上の写真のように輪郭の糸目の線は青い色ですが 後で洗うとこの線の糊が落ちて、白い線となってきます。 挿し色の発色と共に、糸目の輪郭が変わることで 雰囲気はだいぶ変わってきます。
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友禅が終わると、また生地を乾かします。 糊置きや友禅の間は 仕事がしやすいように、 枠だけではなく 生地の裏に伸子(両端に張りの付いた細い竹)を 張って生地をピンと張っておきます。
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今度は乾くまで少し時間がかかります。 同じ下絵で始めた作品でも 糊置きの感じや、彩色の色合いで それぞれに作品の雰囲気が出てきました。 それが手でする仕事の面白さ! なんて事を小さな皆さんにも 感じて頂けていたのなら嬉しいことです。
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乾いた生地を枠からはずして 工場の奥の蒸し場へと向かいます。
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蒸しをかけるために 枠に反物をかけてあります。
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その反物の間をちょっとお借りして みんなの生地も蒸しにかけます。
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100度近い蒸気が出る蒸し器の中に 先ほど枠にかけた生地を入れて 30分ほど蒸します。
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蒸気を当てて「蒸し」をかけることで染料が生地に定着し
友禅で挿した色が水で洗っても流れなくなります。
糸目の線を置いた糊も、蒸気を当てることで洗って落としやすくなります。
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扉を開けると 中から蒸気の湯気が部屋に広がります。 「シュウマイみたい」なんて声も出てました。 朝早く起きて、そろそろお腹も減ってくる頃です!
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蒸し器の中には さっき反物をかけた枠を受けるための レールが付いています。
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蒸しの中に 枠ごと生地を入れて、
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中で生地が重ならないように 確かめて・・
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蓋を閉めて蒸しをかけます。 |
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生地が蒸されている間にお昼休み! 「どんな出来上がりかな」 なんて話をしながら しっかり食べて 午後は水遊び!?
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蒸し上がった生地を 今度は水場で 洗ってやります。 新宿の染め屋さんは 以前はこの工程を 神田川や妙正寺川の水で 洗っていたそうです。
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水の中でじゃぶじゃぶ洗って 糸目の糊をしっかり落としてやります。 すごく暑い日だったので 大はしゃぎしながら。 見ていると楽しそうですが 実際の仕事となると 暑い時の蒸し場の仕事や 寒い日の水洗いなど、 大変なこともあります。 そうして一反の着物が染まってゆきます。
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染め上がった直後に比べると だいぶ色合いの発色が良くなってます。 まだ糸目の糊の青い線が残っていますので ジャブジャブ洗って落とします。
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糸目の群青をよく落として 糸目の線を白く綺麗に出すために 一度洗い上がった生地を 酢酸(お酢)を溶かしたお湯に浸けます。
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酢酸に浸けた生地を もう一度、よく洗います。
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染め上がりです! 後で仕立てて巾着の袋を作ります。 表と裏に柄が上を向くように染めてあります。
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みんな思い思いの染め上がりです! 今回の工程は、友禅染めの着物を染めるのと 同じような工程です。
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本物の着物の場合は、ここから 染め上がった柄の上に更に糊を置いて防染をしてから地色を染めます。 (お品によっては逆に、地色を染めてから友禅を挿す時もあります) 染め上がった後には、金泊や刺繍の加工も加わります。 また、染め物の場合は何度も蒸しや水洗いをとおりますので 洗ってシワになった生地を綺麗に伸ばして整える「地のし」の工程など 数十の工程を経て染め上がってまいります。
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