イベント

ご自分のお好みで染めてみる・・半衿の染色体験 

友禅の職人さんに玉川屋に来てもらって
ご自分のお好みで半衿を染めてみる、染色体験教室をひらきました。


毎年、秋には新宿・落合の「江戸更紗」「江戸小紋」「東京手描き友禅」「湯のし」の
染め工房さんにご協力を頂き、「工房見学&スタンプラリー」を開いております。

「東京の染めを、沢山のかたによく知って頂きたい」という染め屋さん達の想いと、
「お品のことをよく知って頂いて、お着物を永く大事に楽しんで頂きたい」という私共の想いとから
大勢の方にご参加を頂き、それぞれの染めの技法を見学して頂きました。


「染めの工程を見るのもとても参考になったけれど、見ているうちに自分でも染めてみたくなって・・」
そんな感想を頂く方も多くありましたので、
東京手描き友禅の染め屋さんに玉川屋に来てもらいまして
ご自分のお好みで半衿を染めてみる、染色体験教室をお店で開きました。



着物や帯を染めてみたい! そんなお声もありましたが
まずはワンポイントのアクセントを楽しんで頂ける半衿から・・
というわけでの、1日教室となりました。

工房を見学頂いた方は分かるのですが、小紋の染めは
「板場」と呼ばれる反物一反分を長く張れる板や、
12メートル以上の反物を宙にピンと張って地を染める「引き場」など
広いスペースが必要となってまいりますが
友禅染めは、"伸子張り"という両側に針をつけた竹の棒で染める部分だけを張って
小さなスペースで染めを行うことが出来ます。
 


あらかじめ、染め屋さんが "宝尽くし" "江戸玩具" "梅" "桜" "草花文様" など
6つほどの柄の、糸目と呼ばれる柄の縁の線を置いた半衿の生地を用意してきてくれていますので
まずは、ご自分の好きな柄をお選び頂きます。



どっちにしようか迷ってみたり、染め上がって合わせる着物を考えてみたり、と
ここから皆さんの雰囲気も結構盛り上がってまいります。

柄が決まると次は、「色は薄い色から初めて、濃い色目を重ねてゆく」、
「小皿で筆先を良く絞って染料を沢山つけすぎず、面でつけるのではなく、筆の先でさすように色を置いてゆく」
といった筆の使い方やボカシの入れ方、色の濃淡の染めの順番、といった染めの技法の説明から、
好みや手持ちのお着物に合わせた色の組み合わせ方など、の説明を受けて
どんな雰囲気で染めたいかお一人ずつ染め屋さんと相談します。



基本の色はこんな色系、効き色にこの色を・・
そんな話をしながら、染料を混ぜ合わせて一色ずつ小皿に調合してもらいます。
色を作ると端布に色を挿して、すこし乾かせてから色を見ます。
塗り立ての湿っている時は色が濃く映るのですが、乾いてくると色合いが少し落ち着いてまいります。

他の人の色の組み合わせを見て、「その色目もいいわね・・」なんてお話もしながら
自分の使いたい色目の数色を揃えて、染めの工程にかかります。



いざ、染めの工程にはいると
さっきまでは楽しそうににぎやかにお話をされていた皆様も
急に口数も少なく、真剣な表情で生地に向かっています。

生地にチョンと筆先をつけてやると、少し滲みながら色が広がります、
その加減を見ながら繰り返し色を挿して、花や葉など柄を埋めてまいります。

友禅で色を染めることを、「塗る」ではなく「挿す」と呼び、「色挿し」なんて呼び方もしますが、
実際に自分で体験をしてみるとそんなこともよく分かります。

   

半衿はお召しになった時に、
ちょうど衿の両側に柄が出るように2カ所に柄が置いてあります。

まずは片側を染めてみて、
その雰囲気を見ながら使う色を少し変えてみたり、
同じ調子で染めてみたりと染めさんと相談をしながら
後半にむけての構想を練ります。

構図を考えたり、下絵を描いたり、色の組み合わせを考えたり
染めている途中でも配色のバランスやポイントの置き方など、
色々なことを考えながら染めてまいります。



工房の見学をして頂くと、色を挿す工程の作業に一番目が向きますが
じっさいは、そんな作業に入る前の部分や、手を動かす以外の頭の中で染め上がりのイメージを作ったり
といったことが、その染め屋さんならではの大事な部分であります。

半衿の教室の時でも、思ったよりお時間がかかるのが
染める工程より、その前に自分なりの染め上がりのイメージを頭に思って
色を作るまでの部分です。

きっといきなり、「ハイ、思い浮かべて」なんて言われても良いイメージが出ないのでしょうが
お着物の好きな皆さんだと、
「今度のお出かけには、どんな感じで着てゆこうか・・」
「この着物に合わせるなら次はどんなコーディネートを・・」といった事を
普段から思い浮かべながらお出かけを楽しんだり、お店でお品をご覧になったり、していることと思います。

ご自分の箪笥の中、街中の着物姿の方、雑誌やテレビ、呉服屋さんに並ぶ品、
色々なものを眺めながら、自分の中にイメージを蓄積していって・・
そんな引き出しを沢山作っておいてこそ
いざ「着物をお召しになる」、いざ「お買い物」、いざ「半衿」を染めよう、そんな時に
自分のお好みがさっと決まるのだと思います。


3時間ほどかけて皆さんの半衿が染め上がってまいりましたが
最後の方になると、二本の筆を持って使い分けながらボカシをきれいに入れて・・と
本職の職人さんのような雰囲気の皆さんでした。



染め上がると、お互いに見せ合ったり
どんな着物に良く映えるか玉川屋のお店のお品に合わせてみたりと
染める楽しみが終わると、今度はお召しになる楽しみにむけてのお話で盛り上がります。
 
 



蒸気を当てて色を定着させる「蒸し」、余分な染料や糊を洗い流す「水元」といった工程をしてもらい
2週間ほどして、色も品良く落ちつき、お手元に届きます。

作られて売られているものではなく、自分の気に入るように染めるものだから
自分が納得のゆくまで手をかけて・・ そんな楽しみがご参加の皆さんにも
感じて頂けたのではないかと思います。

染めるのも楽しみ、出来るまでもちょっとワクワクして楽しみ、
そして、それを着物や帯に合わせてまたお召しになるのが一番の楽しみ、
普段なら消耗品と思いがちな、一枚の半衿ですが
ご自分の気持ちや想いがこもると、それが着物姿の何よりのポイントになったりもします。


いつも通りのお店の仕事をしながら、
店の奥に台を出して染色教室を開きましたので
お店においでになったお客様も、様子をご覧になったり、
「今度は自分もしてみたい」と次回のリクエストを頂いたりと周りも楽しみながらの教室でした。

「今回は参加できなかったのだけれど、次回は是非・・」
そんなお声も沢山頂いておりますので、また機会をご用意したいと思います。
皆様、ぜひお気軽にご参加になって下さいませ。

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