着物豆知識集

男の着物のススメ

 着物というと女性のものと思っていませんか?
 女性のお着物は、友禅や刺繍、金彩といった日本伝統の素晴しい加工を施した、美しい衣装です。

 それに対し男性のお着物は、見た目の色柄の華やかさはありませんが、そのシンプルさの中にびみょうな生地の風合いや、色の取り合わせ、また裏地や小物のお洒落などで個性を演出します。
 日常のくつろぎから、結婚式やパーティなどのフォーマルまで気軽にぜひお着物を楽しんでみて下さい。普段慣れ親しんだお洋服の時とは、また別の自分を発見出来るのではないでしょうか。

 男性のお着物はあまり柄がなく、無地のものが多いので、女性のものに比べてお仕立て直した時にも筋などが出にくいと思いますので、お父様やお身内のお品を、仕立て直しての着用がしやすくもあります。
(丈が短ければ着物を羽織に直したりも出来ます。)

 お直しに関しては、お品の具合(汚れや縫い込みの量など)によって、お直しの仕方や、可否も変わってまいりますので、どうぞお気軽に、お品をお持ちになってみて下さいませ。

 新しいお品のお支度から、お手入れやお直し、小物の取り合わせやコーディネイトなど、何でもお気軽にご相談くださいませ。

帯の種類

男性の帯には大きく分けて角帯と兵児帯の2種類が有ります。

兵児帯は三尺の茶や黒、紺色などの生地に絞りを入れて作って有ります。
大島や結城や紬類の普段着の着流し姿(袴や羽織を付けない着物に帯だけの姿です)に用います。

角帯は、礼装から普段着まで巾広く使える織りの帯です。
色柄も様々で、無地やとっこ(縞柄)、献上柄などがあります。
高級なものになりますと綴れ織りの物もあります。
夏は、荒く織った羅織りのものなども締めます。

男性の着物は柄がなく色合わせでお洒落をしますので、
着物や羽織、半衿に合わせ自分なりの取り合わせで自分らしさを演出して下さい。

帯結び

男の帯結びの種類も色々と有ります。
袴下には、神田結びや一文字結びといった羽根のある結び方をします。袴のない時は、貝の口結びが一般的ですが、浪人結び、片ばさみ、割りばさみといった結び方もあります。
個性を出しやすいポイントでもありますので、いろいろ結んで見て下さい。


袴(はかま)

TPO

 礼装用には、仙台平、五泉平などの縞のものを用います。(仙台や五泉は産地名、平は縞の意味です) 略礼装や外出用には、紬地などの無地の袴を使います。
 縞のものは銀地に紺やグリーン、黒の縞柄、無地のものは着物に合わせて色々な色があります。
 夏には絽の生地の袴を使います。

袴の仕立て方

 袴の仕立て方には大きく分けて二通りあります。

馬乗り(まちありの袴)
裾にまちを取り、ズボンのように二股になっているもの。
あんどん(まちなしの袴)
スカートのように裾が分かれていないもの。

 まちありのものは、足元が二股になっているので自然と着物や襦袢の裾が割れて歩きやすくなりますが、男性にはトイレの時などが多少面倒なようです。まちなしのものは、逆に足のさばきが悪いので袴の内側の前後に紐を通して着物の裾が割れやすくする事もあります。

 馬乗りの袴のまちを洋服のズボンのようにさらに上まで上げた「たかまち袴」と言われる仕立て方もあります。坂本竜馬がはいていたという「ぶっさき袴」というのもこの仕立て方のようです。
 (正式には馬乗りの袴の方が格上とされるようです。)

 袴の丈は、前の裾が足のくるぶしより少し上に来る位が丁度良い寸法です。袴の丈だけでなく、帯を結ぶ高さなどでも裾の位置が変わりますので、袴を作るときには帯を正しい高さでで結んでから、見本の袴を合わせてみて正しい寸法を測って下さい。

袴の付け方

 袴を付けるときは、帯の結び方と位置が重要になります。
 女性の袴は「貝の口」などの平たい帯結びをしますが、男性の場合は「一文字」や「神田結び」といった外に張り出した形の帯結びをして、袴を付けたときに腰の後ろで段が出来て袴の裾がやや後ろ上がりになるのが凛々しいと言われています。

 又袴の上端は角帯が2cmくらい出るように合わせ、袴の前の裾が足のくるぶしより少し上になるようにします。角帯の位置と袴の寸法が正確でないと、着た時の格好が悪くなるのでお気を付け下さい。短すぎると子供の袴の様になり、長すぎるとだらしない感じになります。

 着物の丈が長く袴の下から出てしまったり足のさばきが悪い時には、着物の裾をまくり衽の裾を角帯の結び目の辺で内側から引っかけておきます。この時、袴は脇が三角に大きく開いていますので、めくった着物が覗かないように気を付けて下さい。

手入れ、しまい方

 袴は着ているうちに特に裾の辺はずいぶん汚れてきますので、ぬいだら全体を(裾の内側も)よく見て下さい。

 袴のヒダは、最初の通りに折って畳んでください。畳んでいるうちにヒダがくずれ易いのですが、畳み方のコツはまず袴を裏返し裏側のヒダを整えます。そして袴の上端を表裏合わせて持ち、整えたヒダに手刀を添えながら、表側に返し表のヒダを整えます。(ヒダの数の少ない裏から整えるのがポイントです。)

 最後に紐を揃え、袴を三つ折りにしてしまいますが、仕立て上がりの時の折り目が残っているはずですので同じ様に畳んでください。折り目がいくつもつくと、着た時に目立ち格好が悪くなります。

しぐさ

 座る時は、袴の裾の膝の後ろ当たりを軽く手でたたき折り込んで座ります。立つ時は、つまさきで自分の袴を踏んでしまいやすいので気を付けて下さい。いきなり立つのでなく、一度つまさきで立って腰を浮かしてから立つと大丈夫だと思います。

 階段などでは、袴の脇の開いている所を軽く持ち上げ、裾を引きずらないようにして歩きます。
 

男の長襦袢

 男物の襦袢には、並巾(1尺=約38cm)の着地に総柄や格子、縞などを染めたものと、倍の広巾の生地で背中に絵羽模様を染めたものがあります。

 襦袢は、色や柄も沢山あり羽織裏と共に男物の中では数少ない柄の有る部分ですので自分なりのお洒落が出来ますが、男の着物は袖の振りも閉じているので外からはほとんど見えないものですので、洒落用にも礼装用にも使えるものを選んでおくと使いやすくなると思います。(女性の着物と違い礼装用にも縞や格子の柄物を使ってもかまいません。)

 襦袢の寸法は、着物の着丈より1寸(約3.8cm)短く仕立てます。  夏の着物には、麻や絽の生地のものを合わせます。

 また晒(さらし)やガーゼの肌着に袖の部分だけ本物の襦袢の袖を付け、衿には半衿を付けた「うそつき襦袢」と呼ばれる襦袢もあります。
 お値段的にも大分安いのでとりあえず着て見ようかという時には、そういった簡単なものから入るのがよいと思います。
 

羽織裏(はおりうら)

 男物は無地風の柄が多いので、なかなかお洒落がしにくいところがあります。羽織裏は男物の中で一番凝ったお洒落の出来るところです。ひょいと羽織をぬいだ時に粋な裏がついている、そのさり気ない所に男のお洒落の面白さがあるのです。

 羽織裏の柄は、小紋柄から縞柄、風景(山水など)、動物(鷹、鯉、亀など)、茶道具や兜などの置物などを染めや絞りであらわしたものなど様々です。誂えて自分だけの柄を染めたり、お名前を入れたりといった事も簡単に出来ますので御相談ください。 

 羽織裏には、並巾(1尺=約38cm)で小紋柄などを染めたものと、額裏(がくうら)という広巾の生地に絵羽柄を染めたものとがあります。額裏は、背中に縫い目が入らず格上の裏になります。

 裏地の色柄は自分らしく自由に選べますが、女性と違い表の生地の色とあまりかけ離れた色を使わない方が品がよくなります。
 

羽織紐

 男物の羽織紐には、丸組みの物と平打ちの物とがあります。色も白や黒から派手な色やぼかしのものまで様々です。又珊瑚や石を途中に挟んだものもあります。雰囲気としては丸組みの物のほうが華やかな感じ、平打ちの物のほうが落ち着いた感じになります。

 色は、着物や帯との組み合わせで同系にしてみたり、アクセントになる色を合わせたりと自由にできます。いくつか用意しておくと一着の着物でも色々な雰囲気でお召しになれます。

 羽織紐は、羽織の衿に付けた「乳(ち)」という輪に付けます。現在は結んである羽織紐の端にカンという金具を付けてそれを使って乳に付ける事が多いのですが、直接乳に紐をつなぎ自分で羽織紐を結んだり、ほどいたりする方が着物姿の仕草としては随分と格好がよい事と思います。
 

胴裏(どううら)

 男物の着物の裏は、肩から裾まで1枚の裏の総裏の仕立てと、女性と同じ様に白の羽二重の胴裏に色付きの八掛けを付ける2通りの仕立て方があります。

 最近では、表地の色に合わせてお洒落を楽しむ方多くなりましたので、お好みに合わせて色を選んだハ掛を付けることがほとんどとなりました。

 八掛けを使う場合は、白羽二重を胴に付け表の色に合わせた色の無地の八掛けを使います。この時は胴裏の縫込みをたっぷり取っておくと、洗い張りをしたときでも順々に出して永く使えます。(洗い張りすると、八掛けの裾は1寸づつ切って落としてゆくのでぎりぎりの縫込だとその都度新しいものにしなければならなくなります。)
 

袖口(そでくち)

 袖口は汚れたり、こすれて痛みやすい所なので、以前は黒地の打ち込みの強い琥珀(こはく)という生地を使っていましたが、今は表の色と合わせた八掛の生地を使うことが多くなりました。
 

半衿(はんえり)

 女性と違い男物は、色付きの塩瀬(夏は絽)の半衿を使います。色は紺系、藤系、グレー系、金茶系、グリーン系、茶系など沢山有ります。

 あらたまった時には表の色と同系や、藤、グレーなどの落ち着いた色の系統を選び、又遊びの時は着物姿にアクセントの付くような色合わせをします。

 スーツの時のネクタイの合わせ方と似た所があると思います。
 半衿の顔映りで、着物姿の感じが全然変わってきますのでいろいろと試してみて下さい。
 

足袋(たび)

 礼装用には白を、普段や遊びの時には色ものを使います。

 色ものは紺や黒が多いようですがグレーなどの中間のお色やグリーンや茶などもありますので
お着物とトータルでコーディネイトする事も出来ます。
 濃い色のものは、履いているうちにつまさきの所が白くなってきてしまいますので、
良く着物を着る方には薄めのグレーなどがお勧めです。

 サイズは、大体靴と同じサイズでOKです。大きすぎるとシワがより、小さいと履いているうちに痛くなってきます。最近は足の形に合わせていくつかのタイプがあるようですので、いろいろと試して自分にあったものを見つけて下さい。
 足袋は洗うとちぢむので、洗ってちぢんでから自分の足にぴったりになるサイズがよいでしょう。老舗の足袋屋さんでは、足の型を取って誂えの足袋を作ってもらえる所もあります。
 洋服の時の靴下に比べ、お着物姿のときの足袋はかなり目立ちますので、足元にも気を抜かずお洒落をしてください。  
 

履物(はきもの)

 男物の履物は、下駄と草履があります。下駄は普段着用になりますが、草履は鼻緒と台の素材や色により使い分けます。簡単な分け方としては・・

礼装用
礼装用には畳の表に、白の鼻緒を合わせたものを使います。
略礼装、外出用
略礼装やお出かけの時には、畳の表の草履をはきます。鼻緒の色は白や黒、グレーなどを使います。(白が最もあらたまった感じになります)
普段用
普段使いには、畳の表に黒やグレーの鼻緒、又は皮の素材の草履をはきます。

 表の素材は、本物の畳からビニールで出来た畳風のもの、又鼻緒の素材も皮やビニールなど色々あります。畳の表のものは、汚れたら履き終わった後にお手入れをしないと変色したりしますのでご注意下さい。
 鼻緒の色は、グレーなどの品の良いものならどんな時でも1足で間に合い便利です。
 雨の日には、つまかけ(爪先にかけるビニールのかバー)を付け、底に滑らないようにゴムを貼った草履や、下駄を履きます。
 

下着

 着物の時の下着は、上半身は半襦袢、下半身は着物用のステテコが良いようです。

 半襦袢は、汗取りの役目もあるので汗をかいた時でも染みの原因となる汗からお着物を守ります。
 又着物を着るとお洋服の時と違い足元がスースーする感じがする事と思います。ステテコをはくと足元も落ち着き着物のさばきもし易くなります。  肌着は夏はさらし、冬はガーゼの生地を、又ステテコも夏用にちぢみの生地などがありますが、表に見える所ではないので自分の感覚で着やすいものを選んでください。
 

雨の日

 お着物は、雨に濡れると縮みやすい素材も多く縫い目の連れる元にもなりますので注意が必要です。
 最近はパールトーンやスコッチガードといった防水加工をすることも多くなってきています。

雨コート

防水加工をした生地を、着物の裾までの丈に仕立てたコートを着ます。袖は着物に合わせ角袖に、衿は洋服のコートの様な袖に仕立てます。

履物

雨様にビニールのつまかけ(爪先にかけるカバー)を付けた下駄を履きます。滑りやすいので下駄の歯の裏にゴムを当て、鼻緒もクラリーヌ(合成皮革)やビニールの素材を使うと扱いが楽になります。
雨の日は足袋も汚れやすいので、お出かけの時には履き替え用の足袋を1足持ってゆくと良いでしょう。
 

男物 着付けのポイント

衿留め

 女性は着物を着る時に、衿が崩れないように「着物ベルト」という小物を使います。男性の場合は衿もとが気になる場合は「衿止め」というピンを使います。

 着物や襦袢の右と左の衿を合わせて開かないように留めるものです。外からは見えませんので、これを付けておくと安心して着物が着られます。

 裾が乱れてきた時は、着物を脱がなくても衽を引いたりして直せますが、衿もとが崩れると一度帯を解かないとちゃんと直しにくいので、たいへん便利な小物です。

前下がり

 男の着物は紐でも帯でも前下がりが基本です。

 脇の腰骨の位置から廻し、前は下腹にしっかりしめます。横からみるとかなり斜めに前下がりになる位でちょうどよいはずです。真横に帯や紐をしめると、すぐに上にずれてきて着物や襦袢がゆるくなってしまいます。前で下腹に引っかかるくらいが一番ずれにくくしめられます。

 お若い方はお腹があまり出ていないのでしめにくいかもしれませんが、タオルなどをいれて補正をすると着易くなります。タオルを入れるときは、うまく入れないとタオルごと紐と一緒に動いてしまう事が有りますので、何回か試してみてよい位置を探して下さい。

 またタオルでなく、晒を巻くのもずれにくて着易くなります。(あまりきつく巻くと、食事も出来なくなりますので気を付けて下さい。)

袴について

 袴は、後ろ上がりに結んだ帯に合わせ、一文字に結んだ帯結びに付けますので後ろが持ち上がった格好になります。この姿が一番きりっと凛々しい格好とされております。

 袴の前のヒダは、右に2本、左に3本と数が違います。左から3本目のヒダが着た時にちょうど正面に来るように着ますので気を付けて合わせて下さい。

 袴の紐の正面の結び方は、あらたまった席では十文字に紐を結ぶのが立派で格好がよいでしょう。紋のない羽織りで少しカジュアルな装いの時にはかた結びに結ぶのもよいでしょう。
 

男物の寸法

 男性のお着物は女性と違いおはしょりをしないので、仕立てる時に丁度よい寸法で仕立てないと着た時に調節ができません。襦袢は着物より1寸だけ丈を短めにしますが、着物の寸法があっていないとくるってしまいますので気を付けて下さい。

 必ず何か見本に着物を着てみて、それを着た時の丈からどの位長くすればよいか(あるいは短く)みて下さい。袴の丈を決めるときも同様に、一度着物を着て帯をしめて、見本の袴を当ててみて丈をはかって下さい。袴は帯の位置がずれると着た格好が変ってしまいますので、帯の位置を正確に着てから丈をはかるようにして下さい。

 羽織りの丈は好みで色々仕立てますが、膝より少し上くらいがよいでしょう。
 羽織りの紐の位置は(背の縫い目から紐のつけ「乳(ち)」までの寸法を「乳下がり(ちさがり)」と言います)、紐を結んだときに帯より少し上くらいの位置が落ち着きます。
 

身頃のあわせ方

 男性は女性と違い、衿もとがゆったりしている位が着物姿がさまになります。

帯の位置をしっかり決め、帯から上は楽に着るとリラックスして着ることができます。衿留めを付けておけば開きすぎずに安心して着られるでしょう。

 腰紐が動きやすい方は、両端にマジックテープのついたのびる腰紐がよいでしょう。一度しめれば動きにくく、きつくなりすぎず、結び目が当たって痛くなることもありません。
 伸びる腰紐のしめるコツは、端をまず脇の腰骨の位置に当て後ろへ回します。反対側へ来たら、紐を十分引っぱって延ばしてから前を回し端のテープで留めます。(言葉では分かりにくいかもしれませんがすみません。延ばしながら留めないと普通の紐と同じ様にゆるみやすくなってしまします。)

 

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