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楽しい着物のキーワード
美しい色彩
本友禅振袖
日本人は墨絵のような白黒の濃淡の中にも色を感じる事の出来る眼を持っています。又日本人の持つ色を表す言葉はヨーロッパの国の持つ色名の数倍とも言われています。赤、青、黄といった原色に始まり、鳶色(とびいろ......鳶の羽根の色)、鈍色(にびいろ.....鈍いグレー系の色)などといった微妙な表現の色までその色数は驚くほど沢山あります。
その様な感性で描かれる着物には、沢山の色数が独特の表現で表されています。緑のはずの木の葉をグレーで表現し全体の雰囲気を柔らかく落ち着きのあるものにしたり、山の遠景を朱や山吹色で描き花の咲く様子を表している着物を眼にしたことがあるのでわないでしょうか。
着物を見るときに、一枚の絵を見るようにその色使いや表現方法を良く見て下さい。今までと違った着物の楽しみ方が出来ると思います。
洗練されたデザイン
丸に笹竜胆紋
着物のモチーフは、草花、建物や景色(寺社、塔、庭など)、いきもの(動物、鳥、蝶)、自然(風、波、雲、流水など)、人物、道具(宝尽くし、古書、鏡裏など)、幾何学模様などそれこそ無数にあります。 それぞれの柄には、いわれや意味があるものも多くあります。それを知り、帯や帯上げ、帯締め、帯止めなどとの組み合わせで表現し、自分の装いにテーマを持たせるのも着物ならでわの楽しみ方といえます。
「家紋」も日本独特の優れたデザインです。丸い枠という限られた空間の中に、上に描いたような様々な事象を意匠化した家紋は、そのデザイン性もさる事ながら、たとえば蝶の紋なら基本の形に数を増やしたり、花と組み合わせたり、向かい合わせたり、羽根を一杯に広げたりと30種以上になるそのバリエエーションが海外からも高く評価されています。
結婚式かお墓参りぐらいでしかご自分の家紋を目にしない方も多いかと思いますが、是非あらためて家紋をみて下さい。呉服屋には「紋帳」という家紋の見本帳がありますのでそれを見るとご自分の家紋の正式な名前やいわれも分かると思います。 ヨーロッパでは自分の家に紋(エンブレム)を持つことが出来るのは貴族だけですので、是非家紋も大事にそして誇りに思ってください。
又最近では、自分で創ったデザインやマークを自由に着物に付ける方もいらっしゃいます。本来の意味を知った上で、自分流に遊ぶのも楽しいのではないでしょうか。
季節感
うちわの柄の夏帯
今の世の中、季節感を感じることが少なくなりました。食べ物にも「旬」というものが無くなってきましたし、草花やいきものにも特に街中では季節を感じられなくなってきました。その様な中で着物の装いでは、自分で季節感を演出することが楽しみ方の一つです。時期の柄や薄物の生地などを用いたり、帯止めや羽織紐などの小物のワンポイントで季節感を演出することが出来ます。
洋服では暑い時には袖を短くしたりデザインを変えますが、着物では絽や紗、羅といった薄物を使い下の生地との透けた感じで涼感を演出します。限られたデザインのなかで、素材、色柄、取り合わせで自分なりの雰囲気を演出することが出来れば着物を着るのが一層楽しくなります。
着物の取り合わせは10月から5月があわせ、6月と9月が単衣、7月と8月がうすものと言われています。基本は大事ですが、あまりそれにとらわれすぎると着物も着にくくなってしまいます。
暑い時には薄い着物を、寒いときにはあわせの着物を着た方が気軽に楽しく着ることが出来ると思います。
智恵
塩沢紬の機織り
着物を作っている工程をご覧になったことがありますか。着物は長い歴史の元で分業制で作られています。
染物、織物、帯など色々な品物がありますが、その糸作りから始まり出来上がるまでには何十という工程を経てきています。各々の工程は長い間の智恵の積み重ねで完成されてきています。本で見たり話を聞くこともあると思いますが、是非実際に見てみて下さい、その複雑さやきめ細かさにびっくりするに違いありません。
今日では着物に限らず、伝統工芸の職人が数少なくなってきています。特に着物は分業制のためどの一つの工程が欠けても出来なくなってしまいます。着物製作の現場を見て頂きその奥深さを知って頂くことが着物の技術を伝えて行くことへの大きな手助けとなるのです。
うけつがれる心
着物は巾1尺(約38センチ)、長さ3丈(約12メートル)の1反の反物から出来ています。仕立ててある着物をほどき縫直すと再び元の反物に戻ります。そのため着物は、寸法を変えて仕立て直したリ、着物をコートに直したりといったことが簡単にできます。これが物を大事にし、次の世代まで残すための日本人の智恵と心なのです。
着物を受け継ぐことは、単に物を節約するだけでなく、その着物を着ていた母の姿を思い出したり、大事に手入れした晴れ着を自分の娘が着る姿を見て小さい頃のいとおしい気持ちがよみがえったり、又祖父の着ていた着物に手を通し親子代々の絆を想ったりと、その気持ちや心を一緒に受け継ぐことなのです。
お持ちの着物は是非大事にお守りください。いつまでもそれを買い求めたときの楽しい気持ちや、仕立て上がりを待つわくわくした気持ち、それを着て出かけた時の思い出がよみがります。そしてあなたがお召しになった後も、お手入れをし優しくしまっておいてあげれば又いつか着物と共にそのあなたの気持ちが受け継がれて行きます。
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